【BOOKレビュー】もしアドラーが上司だったら
2023/04/29
マネジメント
こんにちは。
LifeTraverseチーフコーチの黒岩です。
ブログを読んでいただき
ありがとうございます。
280万部売れた『嫌われる勇気』で
一躍有名になったアドラー心理学。
それを修めた上司が
自分のマネージャーになると
職場にどんな変化が起きるのか。
20代の広告会社員を主人公に、
小説仕立てで読みやすく
この理論を職場におとして
説明してくれるのが
『もしアドラーが上司だったら』
(小倉広著・プレジデント社)です。
アメリカでアドラー心理学を修めた
上司のドラさんは、
主人公のリョウ君に様々な
投げかけをしながら、
思考と行動を刺激し
育て上げていきます。
そのやりとりが、私からは
良質なコーチングにみえました。
私が受け取った
マネジメントの要点は3つ。
それぞれ書いていきますね。
自己受容できなければ、他者受容もできない
心理的安全性のある
職場をつくるには、
部下や同僚の存在や価値観を
そのまま受容する雰囲気が
必要になります。
ただ、他者を本当の意味で
受容することの難しさは、
イメージしやすいですよね。
アドラー心理学では、
他者信頼という言葉で
説明しています。
そして他者を信頼するためには、
まず自分を信頼しなければならないと。
主人公のリョウ君は、
仕事の成績も芳しくなく、
優秀な同期とも比較して、
自分を好きなれない若者です。
そんなリョウ君に
ドラさんは問いかけます。
なぜできないところばかり見るのか?
できた事はないのか?
できている自分をまず
認めてあげなさいと。
このように、
自己信頼の手前には自己受容がある。
私はそう考えます。
私自身、ずっと自分は
何か足りないと課題感を
持ち続けていました。
完璧にはほど遠いし、
時には誰かと比較して
自分を卑下します。
いわゆる自己肯定感が
低い状態ですね。
しかしこの1・2年、
独立や移住で自由を手にしてから、
好きなこと、得意なことで
まわりに感謝される機会が増え、
自己認識に少し変化がでてきました。
案外自分のままでもいいんだ、
さらけだしてもいいんだと。
そして自分を受容できるようになると、
不思議と他者との違いも
受けいられるようになり、
ますますまわりとの
関係性の質が高まってきました。
これは不思議な体験です。
マネージャー自身も自分を
受容できているか?
それができていない人に、
部下を受容することはできない。
そんなドラさんのメッセージも
私には聞こえてきました。
異なる意見を伝える時も、相手を受容してから
みなさんは、会議で
相手と異なる意見を伝えたい場合、
どのように伝えますか?
そもそも反対意見をしっかり
発言できているでしょうか?
この本には、
残業問題を解決するための
社内横断プロジェクトの場面が
出てきます。
リョウ君も参加するこの会議では、
リョウ君の同期で、たまたま
アドラー心理学を読み漁っている
ゆうくんが登場します。
そして、
「業務の棚卸なんてできない」
と主張しているメンバーに対し、
その主張の内容や意図を反復し、
要約して返してあげます。
相手は自分の意見を受け止めて
理解してもらったと安心します。
ここでのポイントは、
「あなたは、〇〇と考えているんですね」
と要約するだけで、
それが良いとか悪いの
意見は挟みません。
一度相手を受け止めたうえで、
でも自分は違う考えを
持っているが、話してもいいか?
と許可をとり、
自分の意見切り出すのです。
ここまでされたら、
相手も「それは聞きたくない」
とはいいません。
むしろ、ゆうくんの意見を
しっかり聞こうとします。
そして、ゆうくんの主張が
会議では通っていくのです。
受容されれば人は心開く。
そして、異なる意見も
受け入れやすくなる。
持論を一言も言えなかった
リョウ君との違い。
そもそも、20代でアドラーを
たしなんで実践しているゆうくんは
ただモノではないですね。(笑)
部下を信じることと、評価することは別軸
この本では、ドラさんとリョウ君が
強い信頼関係で結ばれますが、
ストーリーの後半では
なんとリョウ君が降格させられます。
部下を受容し、信頼していても、
組織全体は別の論理で動いています。
これは、ネットフリックスが
「社員は家族ではない」と
言っていることに近いと思います。
家族であれば、評価や判断を超えて
つながり続けなければならないし、
縁を切ることは難しい。
ネットフリックスでは、
社員をスポーツの各国代表選手、
オールスターチームの一員に
なぞられえます。
目的やゴールにむかって集まり、
お互い信頼し合って
協働するチームだが、
結果がでない個には
チームを去ってもらうし、
場合によってはチーム自体も解散する。
野球のWBC優勝で一躍「理想の上司」
となった栗山英樹監督も、
日ハム時代に手塩にかけて育て、
絶大の信頼を置いていた
中田翔選手が暴力事件を起こしたとき、
巨人に放逐しました。
これも、部下への信頼と評価を
明確に区分した事例です。
逆に、二人に信頼関係が
あったからこそ、中田は
自分のしたことの意味を理解し、
放逐という結果を受け入れ、
栗山監督を恨むことなく
日ハムを去ったのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか?
アドラーが日本の会社にはいったら、
どんな変化が起きるのか?
このほかにも面白い展開と
理論がいくつもでてきて、
読者を飽きさせません。
私も文字の本ではなく、
オーディブルで聴いていましたが、
体感としてはほんとに一瞬で
聴き終わった感じです。
なお、上司のドラさんは、
ずんぐりむっくりで4頭身、
英語とおやじギャクを連発する
愛くるしいキャラです。
そんなドラさんが物語の終盤、
家庭の事情で深刻な状況に陥ります。
そして実家の町工場を継ぐために
会社を去ります。
自分にコントールできない状況が
目の前に現れたとしても、
いかに自分にできる事に集中し、
全力を尽くせるか?
ドラさんはどのように
自分の課題に向き合ったのか?
それは実際に読んでみて、
エンディングを楽しんでください。
「課題の分離」
アドラー心理学の神髄も、
この本の大事なテーマです。