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日本の学校教育は、学びをなめている? 【『私たちはどう学んでいるのか』読書メモ】

こんにちは。
LifeTraverseチーフコーチの黒岩です。
ブログを読んでいただき
ありがとうございます。

私はプロコーチとして、
クライアントの学びや成長に
日々コミットしています。

そこで、認知科学をもとに
人が学ぶ原理を解き明かした
『私たちはどう学んでいるのか』
(鈴木宏昭著)から、
日本の学校教育の弊害をみてみます。

また同時にコーチングではなぜ、
相手の気づきや学びを
引き出すことができるのか、
自分なりに考察してみました。

学び=創発に必要な揺らぎ

この本では、
「学ぶ」とは認知的変化であり、
その人の中で「創発」が
起こることだと定義しています。

ではその「創発」が
起こる仕組みとはなんでしょう?
簡潔に説明しますね。

創発が起こるとき、
人は文字情報など
一つのリソースだけでなく、
身体性、経験、記憶、環境など
多様なリソースに影響を受けます。

多様な刺激から、
人は「揺らぎ」の状態になり、
それを消化することで
学びが進んでいくのです。

揺らぎの状態とは、
外から見ると
一種の停滞のようにみえます。

スランプと言っても
いいかもしれません。

多様であるがゆえにデータが重い。

重いデータの処理に
時間がかかるのは、
人間もパソコンも
同じだということです。

そしてこの「揺らぎ」時に
人は内なる認知的変化を
起こしているのです。

人の成長をグラフにすると、
一律直線的に成長するのではなく、
階段の踊り場のような
平の「タメ」があります。

これが「揺らぎ」の状態で、
ここからまた成長のスピードが
あがっていくのです。

この本では、
発達、上達、ひらめきという
認知的変化でさえも、
同じ原理で引き起こされると
説明しています。

そして大事な点は、
多様なリソースの中には
行為や経験としての
他者との対話もある
ということです。

人と話すことで
創発がうまれるのです。

ちなみに私は
ダイエットをテーマに
コーチングしたことがあります。

ダイエットによる
体重減少もまったく同じように、
直線ではなくいくつかの
踊り場を経て進んでいきます。

人がそもそも
なんらかの変化を起こすとき、
必ずこの揺らぎという名の
停滞=タメの状態を経由する
ということなのかもしれません。

抽象化で手に入れる「型」

この本で主張している
学びの論点に一つに、
「兆候」と「原因」という
二元論があります。

これは「具体」と「抽象」と
言い換えてもいいでしょう。

起きている現象だけ
見るのではなく、
その根っこの部分を探るのです。

例えば、
元メジャーリーガー・
イチローさんの背面キャッチ。

優れた外野手が
背面キャッチできるのは、
「兆候」であって、
「原因」ではありません。

ボールの軌道を読む力、
グラブさばきや
体の柔らかさなど
様々な「原因」があることで
実現できるスキルですよね。

つまり背面キャッチは
優れた外野手の
「兆候」であり「結果」です。

なので子どもが
イチローみたいになりたくて
背面キャッチを練習するのは
本末転倒なのです。

なのに我々人間、特に日本人は
この「兆候」にとらわれすぎる
傾向にあるようです。

兆候だけを切り取って
それをマネても、
本質的な上達には至らないのは、
言うまでもありません。

結果マネではなく、
原因マネを目指すことが、
学びの「型」になると
この本では書いています。

「なめている」学校教育の弊害

実はこの本の裏テーマに、
日本の学校教育批判があります。

ここまで人の学びが
学術的に解明されているのに、
文部科学省主導の学校教育は
全く別の場を提供しています。

著者の鈴木宏昭さんは
文部科学省や一部の学者に対し、
「学び、教育をなめている」
とまで喝破しています。

知識やスキルは
人から与えられるものではなく、
経験や環境など多様なリソースの
揺らぎの中から
自発生的に起こるものです。

ですが日本の学校教育は
すでに答えがあるもの(結果)を
ぶつ切りにしてまねさせ、
学習状態を図るテストは
一つの視覚的情報リソースからだけで
考えさせますし、
閉じられた空間で
他者との対話もなく、
なにかを動かしてみるような
身体的環境も限定されています。

そこには揺らぎが起こる
仕組みが圧倒的に足りていません。

むしろ創発を
阻害しているようにも見えます。

私にも小中学生の
子どもが3人いますが、
学校教育の一方通行性、
その導管的な手法が
昔とほとんど変わって
いないことを知り、
かなり驚きました。

反復学習の効果を
否定するつもりはありませんが、
算数ドリルにしろ
英単語暗記にしろ、
そこには多様性もなければ
身体性=手触り感が
ないのは自明です。

揺らぎも創発も起こりにくい。

何より、学ぶことの楽しさが、
そこには見当たりません。

暗記と結果マネという
特殊なゲームが得意な子どもだけが、
称賛される仕組みに
なっていますよね。

コーチングで揺らぎと創発が起こる?

さてでは
この本からの学びを
コーチングに当てはめてみましょう。

コーチングは
「対話」という一つの行為
ではありますが、
豊饒な学びや気づきを得られる
コミュニケーションだと
再認識しました。

まずコーチングは
クライアントへの質問によって、
過去の経験や記憶、
今持っている人脈やスキルなど
多様なリソースを呼び覚まします。

本人ひとりではやっかいな
自己リソースの棚卸をして、
揺らぎの前提を整えるです。

また、
「相手の立場だったら?」
とか
「空の上からあなたを見たら
どう見える?」
「10年後のあなたが今のあなたに
アドバイスするとしたら?」
など視点や視座、
時間軸を変える質問で、
状況への受容性を
高めることができます。

人の学びが
促進されるためには、
受容的態度=謙虚さが
大切であることは
言うまでもありません。

松下幸之助の
「素直な心」ですね。

この本では面白い実験が
紹介されています。

ある図形パズルを
解かせるときに、
伸筋(突っぱねる、拒絶的)を
使いながら解くグループと、
屈筋(持ち上げる、受容的)を
使いながら解くグループでは、
後者の方が得点が高かった
というものです。

物理的にも受容の状態になることが
学びに変化を起こすというのは
驚きです。

少し話がずれましたが、
結論です。

コーチングは、
対話により多様なリソースや
刺激を呼び起こし、
クライアントの中に
「揺らぎ」の状態をつくります。

そこから、
ひらめきや気づきという
「創発」へ誘う
コミュニケーションと言えます。

いかがでしょうか?

コーチングだけでなく、
学び全般の仕組みに興味がある人も、
教育に携わっている人も、
一度は読むべき良書だと思いますよ。

and, the trail continues.

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photo by TAKAO JINBO